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2017年5月9日 米国債券マーケット日誌

マーケットコメント

 

米国債は+1bpの金利上昇。米国企業の決算発表が進み、大型起債が相次ぐ中、NY時間朝方より緩やかに金利上昇。本日実施された米国3年債入札の結果は+1bpのテールが生じるなど、やや軟調な結果となったことや、ドル円の上昇が観測されたことなどから、金利の上昇幅が拡大する局面も見られたものの、夕刻になって北朝鮮の駐英大使が六回目の核実験実施を強行するとの発言をしたことから、リスク回避的に債券が買い戻される展開となった。

 

 

今日のマーケットをやさしく解説

 

ゆるやかながらも基調的な金利上昇を再確認できた一日でしたが、引けに掛けて北朝鮮リスクが嫌気され、やや買い戻された模様です。北朝鮮の駐英大使のコメントですが、彼がどこまで国内の情報を有していて、どれほどの権力がある人間なのかは不明ですが、やはりマーケットはこうしたわかりやすい情報に飛びつきがちです。地政学リスクがやや緩和していた中でこうしたリスクを再燃させるような発言は困りますね。

 

 

なぜ国債が買われるのか?

こうした地政学リスクが高まった際の金利低下(国債買い)のメカニズムについて、簡単に説明したいと思います。

 

端的に言ってしまえば、「そういうものだから」です。

 

主体が「企業組織」となる株や社債と違い、借主が「国家」となる国債は信用力が違います。たとえば戦争になった場合でも、破綻する可能性は国家であれば比較的低いでしょう。ものすごく端折って言うと、信用力の高さが投資家を国債買いに走らせます。

 

ただ、最も大きい理由は「そういうものだから」です。これは全てのことに通じる真理ですが、論理的な説明は実のところあまり意味をなさず、重要なのはマーケット全体が「地政学リスクが高まった時に債券が買われる」という共通認識を持っていることに意味があると個人的には思います。実際、こうした北朝鮮関連のニュースが流れたからといって、投資家はすぐさま有事に備えて現物の国債を買いに走る、なんてことは起こりえないでしょう。「あー、こんなニュース流れちゃったら国債買われるんじゃないの?」と思う手の早いヘッジファンドの人たちが先物なんか手早くポジションを取るのです。こうした思惑によるポジションテイクはマーケットでは普通のことなのです。

 

有事のドル買い・円買い?

 もうひとつ同様の事象を挙げるとすれば、有事のドル買い・円買いでしょうか。上記の国債と同じく、グローバルでの地政学リスクが高まった場合においては、ハードカレンシーである、ドルや円、スイスフランなんかが選好されます。こうした背景についても、様々議論されており、各々意見が分かれるところですが、結局のところ「そういうものだから」としか解釈できないのです。そうじゃないと、北朝鮮リスクが意識された時、距離的にも近く、直接攻撃を受ける可能性のある日本の円が買われるのは理解できないですしね。

 

経常収支の大きさ?通貨の流動性?フェアバリュー?いやいや、そういうものだからです。

 

2017年5月8日 米国債券マーケット日誌

 

 2017年5月8日

 

マーケットコメント

米国債は+3bpの金利上昇。フランス大統領選挙において、マクロン候補が次期大統領として選出されたことから市場に安心感が広まり、欧州債券を中心に売り優勢の展開となりました。米国時間には、ブラード米セントルイス連銀総裁が「政策金利は現状の水準で適切」と発言したものの、市場を動かす要因とはならず、金利はその後もゆるやかに上昇して引けました。

 

今日のマーケットをやさしく解説

今日のマーケットは、フランスの大統領選(二次)においてマクロン候補がルペン候補に大差で勝利したことを契機に債券が売られました。事前の世論調査では、60%対40%となっていたことから、マクロン氏の勝利は確実なものと見られていたため、特段の驚きはありませんでした。

 

予想通りの勝利にもかかわらず、なぜ市場に安心感が広がったのでしょうか?事前の世論調査ではマクロン氏勝利という予想が大勢を占めていましたが、Brexitやトランプ勝利のトラウマからか、投資家は多少なりともルペン候補勝利のシナリオも意識していました。投票棄権者の動向次第では逆転もあり得るとのテールリスクが意識され、先週の金利上昇局面においても、米欧の債券はあまり売られていませんでした。

 

しかし、投票結果を見てみると、66%対34%と、予想外の大差での勝利となっていたため、市場には安心感が広がり、欧州債券を中心に売られる結果となりました。事前予想を上回る得票率も重要な意味を持ちます。マクロン次期政権は、組閣に向け閣僚の任命プロセスに移行することになりますが、6月の11日と18日には総選挙を迎えることになります。

 

マクロン次期大統領は、政策として若年層失業率の低下や財政均衡の推進、法人税率の引き下げなど、数々の対策を選挙中に公約として掲げていました。

 

しかし、政治経験も無く、マクロン次期大統領の政党「アン・マルシェ!」も、いわゆる新規参入政党となります。だからこそ総選挙の結果を見通す上でも、マクロン次期大統領の得票率は大きな意味合いを持っていたのです。そして、結果は歴史的な勝利となったことから、市場に安心感が広まる結果となりました。現状では、総選挙に関する世論調査は少ないのですが、現状ではアン・マルシェ!が過半数を取ることが予測されています。数を取れなければ、今後の政策実行力にも疑問符が付き、国民ならびに投資家の信頼を失う結果になりかねません。

 

今回の大統領選では、ポピュリスト政党の台頭が顕著となり、ルペン候補が強力な対抗馬として存在感を強めていました。今回はマクロン候補の勝利で幕を閉じましたが、マクロン次期大統領の政策実行力に懸念が高まり、公約の実現が難航した場合においては、いよいよポピュリスト政党が政権を握ることになるでしょう。市場からの信頼を失わないためにも、着実な政策実行を期待したいですね。